今回は、「肛門周囲の病気シリーズ」最終回-会陰ヘルニア-についてお話します。
肛門周囲には意外と様々な病気の発生することがご理解いただけたと思います。肛門は消化器の最終出口としてとても重要な場所です。清潔を保ちつつ、毎日注意深く観察を続けましょう。
主症状は、 排便障害
「肛門の少し下の方がふくらんで見える」「ウンチがすごく出にくそう」そんな時は、会陰ヘルニアの疑いがあります!
会陰ヘルニアは、肛門の周囲を囲む筋肉群が萎縮して間隙を生じ、その隙間の孔(ヘルニア孔)から本来お腹の中にあるべき腸管、膀胱などの臓器が会陰部の皮下に落ち込んでしまう病気です。
直腸がまっすぐ肛門へ向かわずに、途中でヘルニア孔に落ち込んで憩室が出来るため、ウンチがそこに溜まって正常な排便ができなくなってしまいます。
また、膀胱が落ち込むと排尿障害を起こし、ほうっておくと尿毒症で命にかかわる状態になることもあります。
会陰ヘルニアの動物は、排便したくても排便できず、持続的な力みと排便姿勢をとり続けます。
やっと出た便は、形がいびつでポロポロしていたりあるいは少量の軟便だけだったり、血が混じっていたりします。
力む度にヘルニア孔も大きくなりおちこんでくる内臓も多くなってきますので、徐々に肛門周囲の腫れが大きく目立ってくることもしばしばです。
また、最初のうちは肛門の左右どちらか一方だけにヘルニア孔があったものが、次第に両側性となることも珍しくありません。
治療法は唯一ヘルニア孔の整復手術をすることです。この手術は、しばしば再手術が必要となります。
未去勢犬は、要注意!
会陰ヘルニアは、一般に5~6歳齢以上の去勢していないオス犬に多く見られ、メスや去勢済みのオスでの発生はまれです。
また、猫での発生も少ないようです。したがって、予防としては、早期の去勢手術がおすすめです。
去勢手術は効果絶大
去勢手術は、「会陰ヘルニア」だけでなく、前回お話した「肛門周囲腺腫」や、前立腺疾患の予防にも大変効果的です。
今まで少し去勢手術をためらっていらした方がいらっしゃったら、ぜひこの機会にもう一度検討してみましょう。