動物の肛門は被毛や尻尾で隠れていることが多く、また、飼い主さん自身が「できれば見たくない」気持ちもあり、あまり注意の払われない身体部分の一つです。
しかし実は、肛門周囲の病気は意外と多く、中には命に関わる重大な病気もあります。
その中でも特に発生が多く注意の必要な3つの病気「肛門嚢炎」「肛門周囲線腫」「会陰ヘルニア」について、今回から3回シリーズでお話します。
最も多い発生「肛門嚢炎」
犬や猫において、肛門嚢炎は、肛門付近のトラブルで最も多く遭遇する疾患です。
犬や猫の肛門両脇には、スカンクと同じように、異臭を放つ一対の臭袋が存在します。
この臭袋のことを「肛門嚢」といい、肛門腺から分泌される臭い液が一時貯蔵されています。
この肛門嚢が何らかの原因でトラブルを起こし、分泌物がうまく排泄できなくなって炎症を起こしたものを「肛門嚢炎」といいます。
初期の段階では、痒みや軽度の痛みのために肛門を気にして舐めたり、お尻を地面や床に擦り付ける仕草や、自分の尾を追いかけてグルグル回るなどの動作をします。
悪化すると、激しい痛みで怒りっぽくなったり、元気食欲が低下したりすることがあります。
さらに進行して化膿すると肛門脇の皮膚が自壊して穴が開き、血の混じった膿が出てくるようになります。
そこで初めて飼い主さんが異常に気付くということも多く、大抵はケガをしたものと勘違いをされています。
高リスクの子は要注意
犬では、性格の穏やかなおとなしい子や、肥満した子、慢性的な軟便・下痢を起こしている子などで発生が多く見られます。
猫では、10歳以上の老齢の猫ちゃんや、肥満した子に多く見受けられます。
肛門嚢炎は、初期のうちに気付いて対処すればほんの少しの治療で済むのですが、穴が開いて膿が出るほどまでに悪化すると長期の治療が必要となります。
また、一度この病気になった動物は再発することが多いので、定期的な肛門嚢の圧搾を継続する必要があります。
出来るだけ早い段階で気付いてあげられるよう、特にリスクの高い動物では注意して見てあげてください。
次回は、「肛門周囲腺腫」について