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第17回 僧帽弁閉鎖不全症

動物の病気

2019.02.27

そろそろ肌寒い季節になってきました。最近は様々な暖房機器が利用されていますが、私が子供の頃の暖房といえば、「石油ストーブ」でした。給油する時に使った『ポンプ』、懐かしいですね。当時は手動でしたが、今は電動で楽なものです。心臓は、この『ポンプ』によく似ています。血液を身体中に送り出すための、とてもよく出来た『ポンプ』、それが心臓なのです。僧帽弁閉鎖不全症とは、ポンプ(心臓)の故障(疾患)のことです

僧帽弁閉鎖不全症は心臓疾患の一つです。動物にも先天性・後天性の様々な心臓疾患がありますが、その中でも僧帽弁閉鎖不全症は、犬では一番多くみられる心臓病です。特にマルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャーテリアといった小型犬に最も多く発生します。

犬、特に小型犬に多発

この病気は、心臓の左心房と左心室を分けている弁(僧帽弁)がしっかり閉まらなくなる病気で、左心房と左心室の間に血液の逆流と停滞が生じ、全身に送り出されるべきはずの血液が左心房に鬱滞してしまいます。

鬱血のために左心房は徐々に肥大し、近くの気管支が圧迫されて、特徴的な「咳」をするようになります。

さらに進行してくると、肺の血管にも影響を及ぼし、右心系の異常も起こるようになってきます。

そうなると、肺水腫をおこして呼吸が苦しくなったり、胸水や腹水が溜まるようになります。

急激に肺水腫が起こり、心臓の収縮リズムも狂うと急死することがあります。

心臓病だけど、『セキ』

最も特徴的な症状は「咳」です。

「心臓が悪いのに“咳”?」と思われますか? 実際、風邪だとか、食べ物が喉に詰まったかもしれない、などと思って病院にいらっしゃる方も多いようです。

僧帽弁閉鎖不全症の咳は、気管に何か誤嚥してしまった時に出る咳に大変よく似ています。

夜間や、運動時、あるいは興奮して吼えた時などによく出ます。

咳がひどくなると、最後にグエーッと嘔吐する仕草をすることもあります。

肺水腫まで起こすと、呼吸が苦しくなり動くのを嫌がります。

食欲も低下し、激しい咳や、倒れるなどの症状が出た時はかなり重篤です。
現在のところ、効果的な予防法はなく、治すこともできません。

しかし、早期であれば内科的治療によって症状を改善したり、病状の進行を抑えることはできます。

したがって早期発見、早期治療が大切です。
治療方法は、血管拡張薬、強心剤、利尿剤などの内服薬を飲ませることです。

家での注意は、興奮させない安静な生活を心がけることと、できるだけ塩分を控えた食餌を与えることです。

心臓病の動物に適した処方食なども動物病院で求められます。

また、シャンプーやトリミングなどは心臓病を患っている動物にとってはかなり負担となりますので、万一に備えて病気の状態を把握しているホームドクターの所にお願いするのが安全でしょう。

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