慢性腎臓病は犬にも発生しますが、猫に多い病気ということで、今回は猫についてお話ししたいと思います。慢性腎臓病とは、腎臓の働きが徐々に低下していく病気で、中高齢の猫に多く見られます。この病気は、完治することはできませんが、早期発見・早期治療で進行を遅らせることができます。では、どうやって慢性腎臓病を見つけるのでしょうか?
慢性腎臓病の初期症状
慢性腎臓病は、腎臓のなかで血液をろ過し、尿をつくる部分(ネフロン)が徐々に壊れていく病気です。正常な猫の腎臓では、1つ当たり約20万個のネフロンが働いています。しかし、ネフロンは再生することができないため、一度壊れるとその分だけ腎臓の機能が低下します。ネフロンが減少すると、老廃物を尿として排出することができなくなります。その結果、以下のような初期症状が現れます。
・多飲多尿:老廃物を排出するために、水をたくさん飲んだり、尿をたくさん出したりします。
・元気食欲の低下:体内に老廃物がたまると、体調不良や吐き気を感じたり、食べることに興味を失ったりします。
・嘔吐:胃や腸に刺激を与える老廃物が原因で、嘔吐することがあります。
・体重減少:食欲不振や嘔吐によって栄養不足になったり、筋肉量が減ったりします。
これらの初期症状は、他の病気や老化とも重なることがあるため、見逃しがちです。しかし、これらの変化は慢性腎臓病のサインかもしれません。もしも愛猫にこれらの変化を感じたら、すぐに動物病院で血液検査や尿検査を受けてください。
また、外見からは分からない病気を見つけるのが健康診断です。7歳未満の猫は年に1回、7歳以上の猫は半年に1回の健康診断がお勧めです。
慢性腎臓病の治療法
では、どのようにして慢性腎臓病を治療するのでしょうか?まず、最も重要なのは食事管理です。腎臓に負担をかけないように、たんぱく質やリン、ナトリウムなどの摂取量を制限する必要があります。基本的には動物病院で購入する腎臓用の特別療法食を与えるのがおすすめですが、食べてくれない場合は、高齢猫用の総合栄養食であればある程度の低たんぱく、低リン、低ナトリウムとなっています。また、水分補給も大切です。水分不足は腎臓にさらなるダメージを与えますし、尿路感染や結石のリスクも高めます。常に新鮮な水を用意しておくほか、近年の研究ではウェットフードが猫の水分補給に有効とのデータが出ています。
次に、薬物療法です。薬物療法には以下のようなものがあります。
・ベラプロスト製剤:腎臓の虚血と低酸素状態を改善させ、腎機能の低下を抑制する。
・降圧剤:高血圧による腎機能の低下と、その他の全身に対する悪影響を予防する。
・吸着炭製剤:腸内細菌が産生する腎毒性物質(主にインドール)を吸着し、便として排出する。
・制吐剤・食欲増進剤:食欲不振による更なる体調悪化を予防する。
・エリスロポエチン製剤:腎性貧血を改善する。
最後に、補助的な治療法です。補助的な治療法とは、食事管理や薬物療法だけでは十分でない場合に行われる治療法です。例えば、皮下補液で水分補給を行ったり、リン吸着剤で血中リン濃度の上昇を抑制したり、アミノ酸や必須脂肪酸、乳酸菌などのサプリメントを与える方法があります。特に皮下補液は、ヒトのように人工透析が出来ない猫ちゃんにとっては最後の砦です。たくさん尿をして老廃物を排出することによって、年単位で寿命が変わってきます。